防御をしたときにはもう遅かった。
私がカッターナイフだと思っていたものは、『スタンガンアントラー』だったのだ。

当然『スタンガンアントラー』は、私の腕に刺さり放電を始める。
この地下室に焦げる匂いが立ち込める。

まずいことになった。
まさかとは思ったが、すでに樹はDTの能力を使えるらしい。

とにかく、今はここから立ち去らなくてはいけない。
今、一番やってはいけない事は樹に捕まることだ。

全力で元来た壁に『スタンガンアントラー』を抜きながら走る。
振り向くといった事はしない。

壁をゼリーに変えて通り抜ける。
そこで、初めて振り返った。

樹は、『スタンガンアントラー』を投げつけた場所から一歩たりとも動いてはいなかった。
少し不自然に思いながらも、壁のゼリーを解く。
壁は冷たい石の塊に戻る。

攻撃を受けた腕を見る。
焼けるような痛み。
そして、肉を焦がした匂いが鼻を通る。

「どうやらアイツは想像以上の人物らしい。」

腕を抑えながら、ツータングは塚田の待つ部屋へ戻っていった。

          



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